クエチアピンを認知症の行動・心理症状(BPSD)に適応外使用する際の処方監査について、薬剤師として重要な確認事項を問う中級レベルのクイズです。用量、副作用、適正使用を理解しましょう。
クイズの内容に問題がある場合や、改善のご提案がございましたら、お気軽にお知らせください。
📧 内容についてお問い合わせ78歳女性。アルツハイマー型認知症と診断されて2年。最近、夜間の徘徊と興奮症状が顕著になり、家族の介護負担が増大している。
既往歴:高血圧症、脂質異常症
現在の処方:ドネペジル塩酸塩5mg(朝食後)、アムロジピン5mg(朝食後)、ロスバスタチン2.5mg(夕食後)
医師より「非薬物的介入を試みたが改善せず、BPSDに対してクエチアピンを開始したい」との相談があった。
この患者へのクエチアピン処方について、薬剤師として最も適切な対応はどれか?
統合失調症
双極性障害におけるうつ症状の改善
統合失調症の診断は、ICD-10またはDSM-5等の診断基準により慎重に行い、統合失調症以外の精神疾患と鑑別診断を行うこと。
以下の疾患・症状に対して臨床現場で使用されることがありますが、いずれも保険適応外です:
添付文書の「特定の背景を有する患者に関する注意」には以下の記載があります:
認知症に関連した精神病症状を有する高齢患者
国外プラセボ対照試験において、非定型抗精神病薬投与群はプラセボ投与群と比較して、死亡率が約1.7倍であったとの報告がある。なお、本剤を含む非定型抗精神病薬の認知症に関連した精神病症状に対する有効性は認められていない。
クエチアピンは非定型抗精神病薬の中でもSDA(Serotonin-Dopamine Antagonist)に分類され、多数の受容体に作用する多受容体作動薬(MARTA: Multi-Acting Receptor Targeted Antipsychotics)としての特徴を持ちます。よ
受容体 | 親和性 | 作用 | 臨床効果 |
---|---|---|---|
5-HT2A | 高い | 遮断 | 陰性症状改善、錐体外路症状軽減 |
5-HT2C | 中等度 | 遮断 | 食欲増進、体重増加 |
5-HT1A | 部分作動 | 刺激 | 抗不安・抗うつ作用 |
クエチアピンの主要代謝物であるN-デスアルキルクエチアピン(ノルクエチアピン)は:
BPSDに対する効果は主に以下の機序によると考えられています:
パラメータ | 値 | 臨床的意義 |
---|---|---|
Tmax | 1.5時間 | 速やかな効果発現 |
半減期 | 約7時間 | 1日2-3回投与が基本 |
蛋白結合率 | 83% | 薬物相互作用は中等度 |
代謝 | CYP3A4(主) | 薬物相互作用に注意 |
通常、成人にはクエチアピンとして1回25mg、1日2又は3回より投与を開始し、患者の状態に応じて徐々に増量する。通常、1日投与量は150~600mgとし、2又は3回に分けて経口投与する。なお、投与量は年齢・症状により適宜増減する。ただし、1日量として750mgを超えないこと。
段階 | 用量 | 投与方法 | 期間 |
---|---|---|---|
開始用量 | 12.5-25mg/日 | 就寝前または夕食後 | 3-7日 |
増量 | 12.5-25mgずつ | 3-7日毎に増量 | 効果を見ながら |
維持用量 | 25-100mg/日 | 1-2回に分割 | 最短期間 |
最大用量 | 200mg/日程度 | 2-3回に分割 | 例外的使用 |
患者背景 | 推奨対応 |
---|---|
超高齢者(85歳以上) | 12.5mg/日を超えない |
低体重(40kg未満) | 12.5mg/日から開始 |
肝機能障害 | 用量を1/2に減量 |
腎機能障害 | 通常用量で可(透析でも除去されない) |
パーキンソン病併存 | 6.25mgから極少量で開始 |
クエチアピンは糖尿病患者への投与が禁忌となっている数少ない抗精神病薬の一つです。
機序 | 影響 |
---|---|
インスリン抵抗性増大 | 血糖コントロール悪化 |
膵β細胞機能への影響 | インスリン分泌低下 |
体重増加 | 糖尿病リスク増大 |
5-HT2C受容体遮断 | 糖代謝異常 |
禁忌ではないが、以下の患者では特に慎重に投与する必要があります:
項目 | 頻度 | 注意点 |
---|---|---|
血糖値 | 投与開始時、1ヶ月後、以後3ヶ月毎 | 空腹時血糖、HbA1c |
体重 | 2週間毎 | 急激な増加に注意 |
血圧(臥位・立位) | 投与開始後1週間は毎日 | 起立性低血圧 |
転倒リスク評価 | 毎回の診察時 | 歩行状態の観察 |
嚥下機能 | 毎回の診察時 | 誤嚥性肺炎の予防 |
説明内容 | 具体的な内容 |
---|---|
適応外使用 | 認知症への使用は承認されていないこと |
リスク | 死亡率増加、転倒、肺炎のリスク |
効果 | 症状緩和が目的で根本治療ではない |
観察項目 | 過度の眠気、ふらつき、食欲変化 |
緊急時対応 | 意識障害、呼吸困難時は救急要請 |
外国の臨床試験において、非定型抗精神病薬投与群(クエチアピンを含む)はプラセボ群と比較して死亡率が約1.6~1.7倍高かったとの報告がある。主な死因は心血管系事象(心不全、突然死等)及び感染症(肺炎等)であった。
副作用 | 発現率 | 臨床的影響 | 対策 |
---|---|---|---|
傾眠・鎮静 | 30-50% | 転倒、誤嚥リスク | 低用量、夕方投与 |
起立性低血圧 | 10-20% | 転倒、失神 | 血圧モニタリング |
錐体外路症状 | 5-10% | 歩行困難、嚥下障害 | 他剤への変更 |
便秘 | 10-15% | イレウスリスク | 緩下剤併用 |
体重増加 | 10-20% | 糖尿病リスク | 食事管理 |
認知機能低下 | 不明 | 認知症悪化 | 最小用量使用 |
時期 | 主な副作用 | 対応 |
---|---|---|
投与開始~1週間 | 過鎮静、起立性低血圧 | 慎重な観察、減量考慮 |
1週間~1ヶ月 | 錐体外路症状、便秘 | 対症療法、他剤検討 |
1ヶ月~3ヶ月 | 体重増加、耐糖能異常 | 定期検査、食事指導 |
3ヶ月以降 | 遅発性ジスキネジア | 減量・中止検討 |
薬剤名 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
アドレナリン | アドレナリンの作用を逆転させ、重篤な血圧降下を起こすことがある | アドレナリンはα、β受容体の刺激剤であるが、本剤のα受容体遮断作用によりβ受容体刺激作用が優位となり、血圧降下作用が増強される |
薬剤 | 相互作用 | 対策 |
---|---|---|
ベンゾジアゼピン系 | 過鎮静、呼吸抑制 | 併用を避ける |
抗うつ薬 | 鎮静作用増強 | 用量調整 |
抗ヒスタミン薬 | 鎮静作用増強 | 第2世代抗ヒスタミン薬選択 |
クエチアピンは主にCYP3A4で代謝されるため:
薬剤 | 相互作用 | 臨床的対応 |
---|---|---|
ドネペジル | 錐体外路症状増悪 | 通常併用可能 |
メマンチン | 相互作用なし | 併用可能 |
薬剤 | リスク | モニタリング |
---|---|---|
降圧薬全般 | 起立性低血圧増強 | 血圧測定(臥位・立位) |
QT延長薬 | 致死的不整脈 | 心電図モニタリング |
てんかん患者に抗うつ薬を処方する際、添付文書で禁忌となっている薬剤を正確に把握することは薬剤師の重要な責務です。四環系・NaSSA・SNRI・SARI系抗うつ薬の禁忌区分の違いを理解し、適切な疑義照会ができるようになりましょう。
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類天疱瘡に対するニコチン酸アミドの適応外使用について、通常用量を超える処方への対応を問う上級レベルのクイズです。疑義照会の必要性、相互作用、モニタリングポイントを理解しましょう。
※ 重要な注意事項
本クイズは教育目的で作成されています。実際の診療・調剤には必ず最新の添付文書をご確認ください。
最終確認日:2025/1/31